6月は旧暦で水無月(mina-duki)と呼びます。現代日本だと「国民の休日」がないのが難点といえば難点です。6月の伝統行事のイベントには、大祓・夏至・衣替えなどがあります。水無月は「みなづき」が読みとなり、漢字の「無い」は単なる当て字と考えて「水の月」と解釈することができます。
大祓
神社の行事として半年ごとに行われる大祓というお祓いの儀式があります。半年間の穢れを払う儀式です。初詣や七五三に比べると知名度が低い儀式なのですが、行ってみると楽しいと思います。(暑さ対策は忘れずに。6月末に行われることが多いです。)
6月の大祓は夏越しの大祓とも呼ばれます。一条天皇の頃(11世紀ごろ)に成立した勅選和歌集には次のような歌が詠み人知らずとして掲載されています。
水無月のなごしの祓する人はちとせの命のぶというふなり (拾遺和歌集)
和歌の訳ですが「6月の大祓をすると寿命が延びるらしいよ」くらいの意味です。
衣替え
冬服から夏服に替える衣替えの時期です。官公庁などは6月1日で替える所が多いようです。現代の場合はお堅い組織に属していない限りは実際の暑さ寒さで服を替えますが、一応区切りがあると便利です。
昔の衣替えの様子を表した歌として、有名な持統天皇(女帝)の和歌がこれです。
春過ぎて 夏来るらし 白妙の 衣ほしたり 天の香具山
ハルスギテ ナツキタルラシ シロタエノ コロモホシタリ アメノカグヤマ
春過而 夏来良之 白妙能 衣乾有 天之香来山
(万葉集)
訳としては、「春が過ぎて夏がきた。天香具山に(夏の)白い衣が干されているのが見えるよ」といった意味になります。なお、気がついている人は気がついていると思いますが、百人一首の下記の歌と同じ歌です。
春すぎて 夏きにけらし 白妙(しろたへ)の
衣(ころも)ほすてふ 天香具山(あまのかぐやま)
持統天皇 (百人一首)
こっちだと2カ所ほど読みが変わっていて、さっきとニュアンスが変わっています。
百人一首の「き=来る にけらし=たらしい」は、万葉集の「きたる=やってきた らし=らしい」よりも語感的には柔らかい雰囲気になります。また、衣ほしたり(衣がほしてある)→衣ほすてふ(衣をほすと言う) も「人から聞いた」という伝聞系になっているので ややリアリティーが減り、ソフトな雰囲気になっています。
なお、この歌の解釈としては、衣替えとして解釈する説のほかに、神事用の白い衣が干されていると解釈する説もあります。
稽古事始め
能楽・歌舞伎など、和の芸事の世界で、六歳の六月六日に習い事をはじめると上達するという説があります。五月五日が端午の節句(菖蒲の節句=男の子のお祭り)、三月三日が桃の節句(雛祭り=女の子のお祭り)、七月七日が七夕、九月九日が重陽の節句など、数字がそろっている日を吉日にするという発想は伝統行事ではよく見られます。
夏至
太陽が一番長くでている日です。春分・秋分・夏至・冬至は、日本でも世界共通でお祭りの時期になりやすいところです。冬至はかぼちゃという習俗がありますが、夏至にタコという習俗がある地域もあるようです。
男女の出会いの場としても夏至祭りが機能している北欧などに比べると、現代の日本では夏至祭はあまり流行っていません。
ただ、今の日本に夏至祭が存在しないわけではなく三重県の二見興玉神社の夏至祭などが有名です。
お祭り動画(Youtubeより)
夏至は、太陽が一番長く出ている時期ですが、実際に暑さが盛りになる季節の変わり目とは2ヶ月くらいずれます。
天気予報などで「暦の上では○○ですが・・・」というコメントが定期的に入るのは、「暦が実際の気温の動きよりも、2ヵ月くらい先行している」というところからです。ただ、実は暦が夏になった時点で2ヵ月後の夏の熱い盛りを意識すると、「何かの準備をはじめるには、丁度よい」です。
例えば、夏までに体を鍛えて腹筋をわりたい人やダイエットをしたい人は、6月に入ったら準備をはじめておけば、8月の水着の季節には間に合う可能性があるということです。