分割して統治せよという言葉は、歴史の慣用句としてよく引用されます。古代ローマの話で出てくることが多いので、ラテン語の名言から「Divide et impera (ディヴィデ エト インペラ)」と引用しておきます。imperaはインペラートル(皇帝)のインペラで支配するの意味です。Divideは英語のdivide(分ける)と同じです。歴史の話題でよく出てくる話ですが、実は自己管理(なりたい自分になる)みたいなミクロな世界でも使えます。
マクロの視点で見ると、「統治を行うには、なるべく分割して統治しよう」ということです。
古代ローマ帝国も現代のアメリカ合衆国も、多民族国家というのは基本的にこの政策を使うのが得意です。「統治下にある諸勢力を互いに争わせて団結させない」のがキモになります。
大国の立場に立てた場合、その他大勢の国々をいかに団結させないかというのが重要になります。10の力を持つ1つの大国と、1の力をもつ10の小国がある、というような状況であれば、大国側は小国を連帯させなければ覇権を持ち続けることができるからです。
かつてのイギリスが巨大なインドを植民地にできたのもこの辺が上手だったからです。モンゴル帝国も中国大陸を支配していた時期は、身分制度を使って支配される側の民族が団結してモンゴルに逆らうようなことがないように工夫していました。
ミクロな視点で見ると、現代日本のブラック企業も分割統治は得意です。社員同士が連帯しないように無駄に緊張感を高くしておき、無駄に許容量より多い仕事を与えて、ひたすら忙しくさせておき、横のつながりなどができにくいようにして、社員を思考停止の社畜に落として低賃金労働者として使い倒すわけです。一度ブラックな環境に入ってしまったら、逃げ出すためには「社畜になったふりをしながら、脱出準備を着々と整える」しかありません。
ややネガティブになってしまいましたが、ポジティブな視点で見ると「分割して統治せよ | Divide et impera」というのは、「どんなに大変な問題も、小さな課題に分割してやっつけてしまおう!」ということでもあります。
例えば、「しゃべるのが苦手で苦しい」なら、メンタルの問題なのか、体力の問題なのか、話題の問題なのか、精神面か肉体面か情報面か、まず課題を分けて考えるわけです。
そのうえで、身体の問題なら、「身体の筋肉の付き方のバランスが悪い」などが原因なのか、「特定の筋肉が弱すぎること 」が原因なのか、とにかく小さな問題に分けて考えていくわけです。そして、パワーが必要な筋トレをすればいいですし、バランスの問題なら必要な箇所のストレッチを朝晩やればいいわけです。
そうやって、ひとつづつ潰していけば 「わけがわからない深い問題」が「わけがわかるわりと軽い課題」になります。
「分割して統治せよ」というのは、心の中の問題も「分割してやっつけろ」ということでもあるのです。