韓非子の名言に「上下一日百戦」というものがあります。伝説の皇帝である黄帝の言葉として出てくるのですが、組織の上のものと下のものとでは大きく利害が対立しているということです。人間は絶望的に分かり合えないと認めた上で、諦めずにコミュニケーションをとろうと解釈するのがよいです。
とある会社のオモシロ系ネーミングに感動したことがあります。「使えない部下の首を今すぐ切りたいあなたへ」というタイプの命名の商品と 「バカな社長を殴って、今すぐ会社を辞めたいあなたへ 」というタイプの商品を並べて売っている会社があったのです。
ネーミングの過激さはさておき、経営者と従業員というのは立場的には180度対立しているものです。雇う側は1円でも安く雇いたい(買いたい)、雇われる側は1円でも高い報酬で雇われたい(売りたい)という対立があるという話です。雇われる側は1円でも高い報酬を求めるものですし、雇う側は1円でも安く雇いたいものです。
だから、現代ではトヨタでもユニクロでも、大企業は世界に工場を展開するわけです。理由はカンタンで人件費が安い場所で作ったほうが安く商品を作れるからです。一時期は、大企業がチャイナ工場を作るのが流行りました。これは、人件費が安かったからです。最近は人件費が高くなった上に、人件費以外のリスク(たとえば政府が黙認する暴動)などの別のリスクもあるので、チャイナ工場は以前ほどは流行らなくなってきているようです。
一方雇われる側も負けてはいません。やる気が無い仕事ぶりを見せる従業員などどこにでもいます。世の中は仕事熱心な人ばかりではありません。「ほんとに仕事が嫌いなんだろうなー」という感じの人は実にあちこちに存在しています。頑張っても頑張らなくても待遇が同じ仕事というものがあるのも事実なので、やむを得ないところはあります。
利害の対立というのは、人間が集まればどこにでも生まれます。恋愛ドラマで若いカップル同士が
「私と仕事とどっちが大切なの?」(女子)
「仕事!」(男子)
「涙」(女子)
「・・・・(しまった。そのまま返してしまった)」(男子)
というやりとりをするシーンが時々ありますが、これも男女間に根本的な利害対立が存在していることを象徴するミニストーリーです。
こうした「根本的な対立」は「見ないふり」をしてもいいことは何もありません。
「絶望的な立位置の違いがある」という「違い」を認めることが大切です。社長と従業員、上司と部下は立場が全く違うのだということを理解することが重要です。
そこを認めてしまうと、人間関係の無駄なストレスは大きく減っていきます。