銀河英雄伝説というSF歴史小説に「タンクベッド」という疲労回復装置が登場します。宇宙船に搭載される「1時間のタンクベッド睡眠は、8時間の睡眠に匹敵する」という便利な装置です。実はこの装置、作者が元ネタとして参考にした可能性がある装置が、20世紀の地球に既に実在しています。
まずは、銀英伝の第一巻からタンクベッドについての描写を分析してみましょう。
>タンクベッドでの1時間睡眠で8時間に相当する
>感覚を遮断する
>塩分濃度の濃い液体に浮く
的な描写があります。
このモデルになった可能性があるのは、フローティング・タンク(Floating tank)あるいはアイソレーション・タンク(Isolation tank)と呼ばれる装置です。アメリカで考案された装置ですが、21世紀現在では日本でも現実に体験することができます。
現実のアイソレーション・タンクは「タンクで1時間寝ると8時間の睡眠に相当」とまで言うと誇大広告になると思います。が、
>短時間のタンク体験で高い疲労回復効果
>感覚遮断で疲労回復効果
>塩分濃度の濃い液体(高純度のエプソムソルト)に浮く(体感的な無重力状態を作り出す)
この辺のコンセプトに関しては全く同じです。
なお、小説のタンクベッド睡眠は「夢を見ない」「疲れはとれるけど寝た気がしない」というデメリットがあるようですが、現実のタンクにこのデメリットはありません。小説内のタンクベッドとの一番の違いは「タンクに入った人を強制的に7日間眠らせてしまうような機能はない」という部分でしょうか。
もし深夜の通販番組的な大げさな表現を許してもらえるのなら、「タンクでの1時間は8時間の昼寝に匹敵する」と言ってもよい装置は現実世界にもある、と言えると思います。
SFで登場する「未来のテクノロジー」というのはだいたいが、実際に研究はされているものなので、「現実が小説に追いついていること」はあります。
SF映画や怪獣映画に出てくる有名な兵器というと、レーザー砲ですが、西暦2015年現在、こちらもイスラエル軍とアメリカ軍が既に実用化しており(THELなど)、アメリカ海軍でも艦船にどんどん配備されていく予定のようです。