町の本屋さん、1999年からの20年で約2万店から約1万店、半分くらいに減っているようです。これって、ネット書店や古本屋や電子書籍などの影響もなくはないのでしょうが、それ以前に、ただ単に本という商品が薄利多売な価格によりすぎてるだけなんじゃないのという疑問が浮かびました。
専門書の値段と、一般書の値段
専門的な本になると、1万円の本とか5000円の本などは、普通にあります。みんなが買うというよりは、必要な人と興味がある人だけが買うという本です。一方で一般書になると価格帯がぐんと落ちて、1000円から3000円くらいになることが多いかと思います。
そもそも本の原価はどれくらい?
たとえば小説をイメージしたとして、執筆や編集などコンテンツ自体を作る費用、印刷などの物質としての本を作る費用、広告含む営業的な費用、流通や倉庫などの費用、書店での販売の費用、などなどがあると思います。再整理すると、メーカー(出版社・著者)→問屋→小売、です。そして、小売の書店の取り分としてどれくらいかというと、2割程度のようです。
本屋は1000円の本を1冊売るといくら儲かる?
小売店の取り分が2割となると、1000円のものを売ったら200円です。ここだけ見ると悪くない数字に見えるかもしれませんが、200円が本屋の手もとに残るわけではありません。ここから本屋自体の維持費を引く必要があります。家賃とか人件費とかもろもろの販管費を引くと、平均的にはほとんど残らないようです。
そもそも儲かりにくいビジネスモデル
となると、書店単体では規模感がないと赤字になりやすいため、他の商売をして全体として成り立たせるケースが少なくないと予想されます。町の電気屋さんは実質的に電気工事屋さんで店頭販売はおまけ、ということが少なくないようですが、書店の場合も色々ほかのことをやって成り立たせていることも多いようです。
最近だと、ツタヤとスタバみたいにカフェ併設というパターンもありますが、あれはいいアイディアだと思います。古本屋と新品の書店を同じ店でやっている例もありますが、これも面白いと思います。蔦屋書店みたいにテーマパーク化するのも手ですし、逆に店主こだわりのマニアックな本ばかり集めて「店主のおすすめを定期購入」みたいなお店もあるのかもしれません。
書籍の場合、再販制度で値引きはできないかわりに、小売店は書籍を問屋に返品できるケースが多いようです。その意味では小売店に優しいです。ただ、返品できるということは、卸側はもちろんそれを反映させた値段を設定することになるので、仕入れコストにははねかえることでしょう。
単純化して、駅前のとても小さいお店で、無休営業で、家賃光熱費15万円、人件費が40万円(20万円の人が2名)、広告宣伝費5万円として、だいたい月に60万というおおざっぱな計算です。これを本でカバーするには、1000円の本が200×3000、月3000個、1日100冊出てようやくプラスマイナスゼロくらいです。単純計算でもなかなか厳しそうに見えます。
一般人が町の書店を応援するとしたら
お金を考えると、併設のカフェがあれば、そっちでコーヒーでも飲むほうが、本を買うよりも応援になるかもしれません。
あとはきわめて初歩的な話ですが、1000円買ったからといって書店が実際に儲かるお金は下手したら10円レベルなので、少なくとも1000円買えば1000円の応援になるとは思わないことでしょうか。
また、古本や電子書籍やネット書店に関しては本質的な問題ではなく、それよりは紙でも電子でも新品でも古本でも、「(必要なら)高い本も気にせず買う」という文化を育てていくほうが、本という世界を応援したいならより有効なのではという気がしました。売り上げ規模が上がれば薄い利幅をカバーできる可能性が上がるので。