主人公の少女が「時間」という失われた宝物を取り戻すという物語です。子供向けの本として書かれてはいますが、逆に学生でなくなってから改めて読んでみてほしい本です。映画にもなっていますのでそちらもおすすめです。
何も考えずに楽しめるファンタジーでもあるのですが、大人になってから読んでみると「時間論」や「労働論」にもつながっているストーリーです。西洋近代とその影響をモロに受けた日本近代にも共通するある精神的な「ヤバイ話」について考えさせられるストーリーになっています。20代の頃に、飲み屋で出会った女性社長が「これば絶対読め!」と薦めていたのですが、確かに大人になってみるとむしろ大人にこそ読んで欲しい作品だと思いました。
さて、西洋近代的な時間感覚のヤバさがどういうものかというと、こんなブラックジョークがあります。
1.経営コンサルタントが、アフリカの奥地に出かけていってすごい漁場を見つけ、土地の漁師に声をかけました。
2.コンサルタント「ぜひ、会社を作って。魚を輸出しよう。そしてたっぷり働いて上場したら、会社を売って遊んで暮らしていけるようになる。」
3.コンサルタント「お金を稼げば、毎日のんびり暮らせるようになるよ」
4.漁師「もう既に、毎日のんびり釣りをして楽しく生活しとるがな。。。。」
近代人が「未来のためにひたすら今を我慢する」という時間感覚を身につけているのに対し、古代の感性を引き継いでいる人達は「今を生きる」感覚が強いという話です。日本も明治以前は「今を生きる」感覚の強い世界でした。(「時間に正確な日本」というイメージは明治以後にできた短い伝統なのです。)