神話やファンタジーの世界には伝説の金属というものがあります。指輪物語で登場するミスリル銀、プラトンが言及したアトランティスの金属オリハルコンなどです。ところで、歴史的に実在する金属なのですが伝説的な響きを持つ金属がダマスカス鋼です。古代の製法は失われていますが、デザインを再現した製品が現代に蘇っています。
歴史上のダマスカス鋼は、古代インドで開発されたウーツ鋼の別称で、シリアのダマスカスで刀剣に鍛造されたことからこの名前がついたと言われています。
もともとのダマスカス鋼の模様はこんな感じ。独特の製法によって地層のような美しい模様が浮き上がっています。
(Rahil Alipour Ata Abadi at the English language Wikipedia [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons)
これに着想を得て現代の日本でかつての刀工たちの技術を受け継ぐ人達によってつくられているのが、ダマスカス鋼の名を冠した包丁です。日本刀の技術を受け継ぐ者たちによって、「美しい&強い」包丁が作られています。
例えば、関孫六(貝印)によるダマスカス包丁はこちら。
(写真はAmazon.co.jpより)
美しさにひかれて実際に購入して使ってみましたが、「抜けば玉散る氷の刃」ではありませんが、最初の瞬間、とてもよい切れ味で背筋が伸びました。刃紋が美しいので「タマネギを切るのも楽しく」なります。ステンレスでお手入れカンタンなのにとてもよく切れます。家庭用としては十分な性能でしょう。6000円を超える価格帯ですが、3000円クラスの包丁と比べると性能の差は歴然です。
貝印の包丁の模様を拡大するとこんな感じ。とにかくカッコイイです。この模様はプリントしたものではないので一本づつ異なるそうです。写真より本物のほうが質感も模様も断然良い感じでした。
さっきの歴史的なダマスカス鋼の模様と並べるとこちら。良い感じに似た系統の外観になっていますね。
まずは一本と考えると、牛刀がいいか三徳がいいか迷うかもしれませんが、その辺りは普段よく使うほうを選べばいいと思います。写真はPC環境によって白っぽく見えるかもしれませんが、実際はよくあるステンレス色です。
関の孫六(=孫六兼元)は「村正」「虎徹」などと並んで日本刀の名称としては非常に有名なもので、戦国武将はもちろん三島由紀夫も所有していたと伝えられています。現代では日本刀の需要は少なくなったので、かつての刀鍛冶たちの系譜を継ぐ人達が包丁を作っていたりもするわけですが、これがとてもいい感じですのでおすすめです。