キリスト教は聖書という1つの公式テキストがあるけど、仏教は経典があまりに膨大すぎて何を見ればいいのか分からないという話題があります。同じことを感じたことがあるのでその辺りの問題を考えようと思います。
聖書は1冊の本なのか
1冊の本ですけど、キリスト教の聖書に関していえば「中身は無数のコンテンツの集合体」です。たくさんあったキリスト教のコンテンツの中から、キリスト教の公的な組織が「これが公式」と認定したものの集まりになります。大きく分けると旧と新に分かれていて、旧のほうはユダヤ教と共通します。
聖書という公式本にどのコンテンツを入れるかは時代によって変化がありますので、現行の聖書だけを読んでも中世の人間が読んでたであろうコンテンツが入ってないといってワナがあることもあります。
また、キリスト教自体が巨大宗教でいくつも派閥があります。大きくは、ローマ教皇をトップとするカトリック(西の教会)、ロシアなどの欧州の東側を中心に広まっているギリシャ正教(東の教会)、アメリカなどで主流のプロテスタント諸派(新教)、の3つの大きなグループがあります。なので宗派によって公式本に入ってる中身が若干違う場合があります。
ただ、主要コンテンツはだいたいどれを読んでも入っていると思われますので「読むことに関しては、聖書を読んでおけばOK」と言えなくもないのは確かです。
時間がなければ「漫画 聖書物語」みたいなものから入ってだいたいどんなストーリーがあるのか把握するだけでもだいぶ違うでしょう。
仏教の基本コンテンツを一気読みするには
仏教の場合は、仏教世界の全体的な組織が決めた「1冊にまとまった公式本」みたいなものはないので、入口としては仏教研究者の解説本に頼ることになるでしょう。
「マンガでわかる仏教入門」的なものではなく、読書好きな人向けの基礎知識を解説してくれてる本だと、「日本仏教の基礎経典 大角修 角川選書」がおすすめです。
・釈迦の生涯と教え
・日本の仏教と文化をはぐくんだ経典 (法華経・維摩経・勝鬘経)
・鎮護国家の経典(法華経・金光明経)
・薬師如来の経典
・般若経典群
などなど
主要なことをざっと解説してくれているので、非常に便利です。はじめて読んだ時に「この本はすごく親切だ」と喜んだことがあります。
わりとコンパクトにまとまっているので、聖書をざっと通して読むよりは気楽に読めると思います。
概要のまとまってる本なので、より詳しく知りたい部分がでてきたら「全訳の法華経を読んでみよう」みたいに詳しくみていくという展開でいいと思います。
おまけ
宗教のコンテンツは本質的に理解しようとすると、その世界の内部の人間でないと100%は理解できないと思います。
カレーを食べたことがない人にカレーの味をいくら解説しても理解させることはできないというような話です。料理と同じで、当事者としての実体験なしに深く理解できるジャンルとは言いがたいでしょう。
ただ、その宗教の信者ではない人が「読み物」として触れる場合も深い魅力がある分野なので、興味が出たものは調べてみる価値はあると思います。
そうそう。欧米の知識人が「仏教は哲学だ宗教じゃない」ということがたまにあります。が、欧米の人たちは基本的に「(日本よりも)キリスト教的成分が多い世界」に住んでるので「いや、ブッダの哲学を面白がってるだけだよ。キリスト教じゃない異教を信じてるわけじゃないよ。」というツンデレ的ポーズで言ってる可能性は考慮しておいたほうがいいかもしれません。