この和歌は在原業平が病気で死にそうになった時に呼んだ歌と言われています。「いや-、人間必ず死ぬってことは知ってたつもりだったんだけどさ、まさか昨日今日で、自分が死ぬとは思ってなかったよー」というような、とっても人間的な歌です。
和歌にしても物語にしても、解釈というのは実ははどうとでもできる部分があります。この歌も「もう死ぬんだー、あはは。さっ来世にいこう♪」という諦めの気持ちでよんだのか、「もう死ぬんだー、残念!悔しい!」という執着の気持ちでよんだのかは、本人のみぞ知るです。
どちらにしても、人は死ぬというのは当たり前の話で昔からよく知られた事実だったはずです。ただそれでも「自分が当事者」になった時はびっくりするものなのです。
当たり前に聞こえる話も、他人事の時と自分事の時とでは大きく反応が変わってきます。それを素直によんでいるこの和歌は非常な名言だと思います。
「人は必ず死ぬ」ということは誰でも知っている常識です。ある程度以上の年になれば親しい人の死も一度や二度は経験しているでしょう。ただ、そうはいっても何かあるまでは、「自分ももう長くない」とはなかなか思わないのが人間というものです。当たり前のことを当たり前に記憶しておくために、こうした和歌を覚えておくことに意味があると言えます。